このクルマを見て『Jeep』という名が思い浮かばない人はほとんどいないに違いない。子供の頃から大好きだったホンモノのジープ、WILLYS社製の旧いジープを手に入れた時、そんなことに気がついた。ホンモノのジープは幌をかけてもドアがない。だから信号待ちしていても道ゆく人たちの声がよく聞こえる。子供からお年寄りまで、このクルマに気づいた人は皆例外なく笑顔になって「あ、ジープだ!」と声にに出す。ちょっと誇らしげな気持ちになるのは言うまでもない。他にこんな経験が出来るクルマは多くはないだろう。
ここからちょっとマニアックなお話し。ジープ好きの間ではホンモノの、いわゆる元祖ジープのことをLow Hoodと呼ぶことがある。言うまでもなくアメリカで軍用として生まれた小型四輪駆動車であるこのクルマは当初、機動性を重視した小さなボディーと、敵から発見されないようにと低いボンネット(=Low Hood)を持つものであった。そんなプロフィールを守って量産されたのは実質的にイラスト手前のWILLYS社製のMBというモデル、WILLYS社の設計はそのままにFord社によって製造されたGPW、そしてイラスト右後方のM38と呼ばれるMB/GPWの後継モデルのみとなる。その後三菱が製造したジープや、AMC社/クライスラー社によって生み出されたジープの名を冠した後継モデルにはないコンパクトさが独特の雰囲気を醸し出す。ジープだけでなく、その後生まれた全ての四輪駆動車の元祖と言っても過言ではないLow Hoodジープ、その魅力は『凝縮された機能美』なのだと思う。