FRと聞いて心ときめくのは、走るのが大好きなヒト、レース&ラリー好き、そして80年代に青春時代をおくった男たちだろう。そのどれもに当てはまる僕が免許を取って最初にドライブしたのは、トヨタスターレット。フロントエンジン&リアドライブ(FR)のKP61最終型だった。トヨタのブランドに憧れたのは、当時ハマっていたラリーがきっかけ。世界ラリー選手権で活躍していたセリカも、国内ラリーで一時代を築いたカローラ/スプリンターAE86、そして国内ラリー1300ccクラスではほぼワンメーク状態だったスターレットKP61もみんなFR。雑誌や映像で見るコーナーを豪快にドリフトする姿に、鳥肌がたったものだ。ラリーの世界でトヨタのFRは輝いていた。
その後のモデルチェンジで、スターレットもカローラもセリカも、みんなフロントエンジン&フロントドライブ(FF)となり、ラリーの世界では4WDが主流となったことは多くの皆さんがご存知のことだろう。
先日今年開催41回目を数える東京モーターショーに行ってきた。規模の縮小、大手海外メーカーの不参加、コンセプトカーの少なさなど、負の要素ばかりが取り上げられている今年のモーターショーだが、トヨタが出品した発売前提と言われる現実的なショーモデルの一つに、多くのクルマ好きが注目している。僕もこれを一番の楽しみに出かけたのだった。
その名はFT-86 concept。トヨタが今の世に問うFRのコンパクトなスポーツモデル。そう、86のネーミングはあのAE86、『ハチロク』へのオマージュなのだ。僕に、そして多くのクルマ好きに運転の楽しさを教えてくれたFRスポーツの復活が、日本のクルマ文化をエキサイティングにしてくれることを、切に願う。