9月初旬、僕たちはIllinois州のChicagoを出発、Route66を辿って南西に進路をとり、今Springfieldという小さな街を走っていた。湿度が高い曇天、今にも泣き出しそうな空を恨めしく思いながら。Route66/Road Side Attractionと書かれた看板に誘われて立ち寄ったのは、1946年からここにあるというSEARSという名のガス・ステーション。今はガソリンは売っていないようで、様々なブランドのオイルやガソリンの看板、何台もの旧いポンプなどが無数に、かつ無造作に飾られ、土産物を売る小さなショップがあるRoute66の観光スポットになっている。ここのオーナーらしいツナギを着た老人と、近所の住人と思われるやはり年老いた男性が新聞を眺めながらのんきに世間話をしていた。
一番目立つ場所に陣取っているブルーのピックアップ・トラックは1950年代初頭のINTERNATIONAL社製。不釣り合いに真新しいライセンスプレートの『66 R KIX』の文字はあの名曲『Route66』の歌詞にちなんだもの、ドアの『Sign Language』は観光客に対して手話で対応出来ることを表しているのだそう。
まだInterstate44号線が通るより遥か昔、このピックアップがピカピカの新車だった頃のRoute66はさぞ賑やかだったことだろう。しかし今は一日のうちにどれだけの観光客がこの場所を訪れるのか。平日であるこの日は僕たち以外に尋ねる者もなく、のどか過ぎる時間が流れていた。