早朝から走り出し、日没近くまで走れるだけ走る。その日の正確な目的地は決めずに。フリーウエイにのって距離を稼ぐか、ローカルハイウエイを景色を楽しみながらのんびり行くか。初夏と言ってもまだ肌寒い北カリフォルニアからPCH(パシフィックコーストハイウエイ1号線)を下って、充分に夏の気温になっている南カリフォルニアの海沿いの街に到着。VACANCY(空室)のサインを見つけて、今日泊まるモーテルを決める頃には完全に日が暮れていた。中東からの移民らしき愛想のいいオヤジが、オフィスのカウンターで僕に「何泊するんだ?」と聞いてくる。支払いを済ませてキーを受け取り、モーターサイクルを部屋の前まで移動させる。旅の荷物とさっき買い込んできたハンバーガー、ビールの入った紙袋をかかえてドアを開ける。必要以上にエアコンが効いたこの部屋が今夜の寝床だ。熱いシャワーが待ちきれず、せわしなくブーツを脱ぎ捨てた。
ベッドの上で地図を広げて、今日のルートを目で辿り、これから行くルートに思いを馳せる。ふと思いついてSandpiperを辞書で調べてみると、イソシギという鳥の名前であることがわかった。明日は内陸に向けて走り出す。