ハーレーダビッドソンが国内市場で人気を博しているのは皆さんご存知の通り。この流れは世界的なものでもある。興味のない方から見れば100~300万円台の自動二輪車は間違いなく高価。しかしハーレーが特別な人のためのものだった時代は過ぎ去り、皆さんのまわりにもハーレーオーナーは必ずいらっしゃるはず、そんな存在になったのもまた事実だろう。
大きくてクラシカルなスタイルはもちろん、大排気量のV型2気筒(通称ブイ・ツイン)エンジンがもたらす、他に比べるもののない大らかな乗り心地など、その魅力は多い。
そんなハーレーがビッグ・チェンジを果たした。「水冷エンジン」になったのだ。クルマの常識、いや現代の内燃機関の常識からすると「え、今さら何を…」なのだが、ハーレーにとってはニュースなのだ。実は、インジェクション(電子制御燃料噴射装置)を装備するようになったのもそう昔のことではないハーレー。10年ちょっと前にデビューしたニューコンセプトのV-ロッドで既に水冷やインジェクションは採用されていたが、ビッグツインと呼ばれる伝統的なパッケージのハーレーが水冷・インジェクションを装備するのは、まさに革新。
時代の要請もあり先進技術を取り入れることも必要。しかしハーレーのユーザーとは不思議なもので、ハーレーが洗練されることを必ずしも望んではいない。洗練によってハーレーエンジン特有の鼓動感が損なわれれば、従来からのユーザーにそっぽを向かれるリスクもあるのだ。そこに最善の着地点を見つけながら、少しずつ「洗練の道」を進んでいる、そんな愚直な姿勢が、恐らくハーレーダビッドソンが支持されるひとつの理由に違いない。