薄曇りの空の下、背中を丸めたようなシルエットと丸形の二灯ヘッドランプ、錆びて朽ちかけたボディーに何とも言えない哀愁を感じ、アパートにカメラを取りに帰ってまで残したスナップが今回のネタもと。
撮影したのは東京都国分寺市の五日市街道と府中街道が交差するあたり。僕がこの近辺に住んでいた昭和58~62年当時は、街道からほんの少し入れば農家や空き地が多く見られた。通りがかりのそんな空き地の一角に放置されていたジャンクは、全てのウインドウが破られているものの、そのボディーやグリル、バッヂ等から、昭和30年代に生産されたDATSUN 1000と、その後を継いで昭和38年まで生産された310型と呼ばれた初代DATSUN BLUEBIRDであることがわかった。
数年後、同じ道を通った時、DATSUNが佇んでいた場所には白くて真新しい住宅が建ち並び、やけに明るい雰囲気に様変わりしていた。あの2台は誰かに引き取られ再生されたのか、それともスクラップになってしまったのか、今となっては知る術もない。